税金繰り延べ効果の過信に注意!
【以前のエントリー】で「複利の力と課税タイミング」について取り上げました。割と好評だったのと、わかりにくいところを修正しようと思ったのですが、せっかくだから新しいエントリーとして書き直しました。なお、タイトルはとある投資家さんがもっと過激なのを付けてくれたのですが、人間関係を大切にする私としては少し控えめに直してつけました。(さいもんさん、ありがとうございます。)
複利の力は投資をやっていると良く聞く話で「毎年15%を複利で回せば5年で倍以上、50年で1000倍になります」なんて話を聞くと凄いな~とか思いますよね。さらに、よくこんな話を聞きませんか?
「運用益や配当に対して税金が毎年20%引かれるのは、資産運用を考えるととても不利!」
「分配のない投資信託を活用して、最後に課税するようにするのが得なんだよね」
「5%の利回りなら翌年には1.05倍の資産から運用スタートするけど、ここで課税されれば1.04倍。これが長年積み重なれば結果は違って当然!課税タイミング超重要!!」
そうなんです。運用益や配当に関する税金の話題になると、必ず「投資信託などで毎年配当をもらうと、その都度税金がかかり運用上不利になる」という話になります。確かに、同じ5%の利回りで運用したとしても、20%の税金を引かれると4%になってしまいます。課税されなければ毎年元本に対し1%以上多く元金に組み込まれて複利運用できますので、最後まで課税を繰り延べて複利で運用した場合は、毎年課税された場合に対して明らかな差が「出そう」です。
「差が『出そう』じゃなくて『出るにきまってる』だろ!」
こんな声が聞こえそうですが、私は思いましたよ。
「で、誰か、計算して見たの?」と。
そうなのです。何処を見渡しても、「毎年課税された場合」と、「運用期間中は課税されず、最後に課税された場合」の差を計算して比較したものを見たことがないのです。
いうわけで、「20%課税を前提に、一定の利回りで複利運用して何倍になるか」を計算したのが次の表です。上半分が無税で複利運用し、最後に20%の税金がかかるケース、下半分が毎年20%の税金がかかるケースです。運用利回りは2%と5%(よくインデックス投資をされている方が「株式の期待リターンは5%」とおっしゃっている)の2種類をまず計算して見ました。
実は、利回り10%以下で運用期間が30年くらいだと、あまり大きな差がつかないのがお分かり頂けたと思います。おそらく「毎年税金がかかる」という言葉がものすごい差を生みだすような錯覚を起こすのだと思いますが、最後に税がかかるので多くの人の想像より差は小さいのではないでしょうか。
しかし、利回りが2桁で30年を超えるような運用をすると、かなり大きな差になります。先ほどと同様、上半分が無税で複利運用し、最後に20%の税金がかかるケース、下半分が毎年20%の税金がかかるケースです。
10%以上の利回りで30年以上を見ると、明らかに大きく差がついています。個人で20%以上の利回りを出しながら50年間運用するのは不可能に近いと思いますが、バークシャーはまさにこの状態ですね。運用に自信があるのは配当を出さない事にも表れています。「あなたにお返しするより、私達の事業の方が上手くいくはず」という自信を感じますね。
当然ながら個人の資産運用はここまで上手くできる人はまれでしょう。となると、最終的に課税される場合は課税タイミングはそれほど重要ではなく、投資対象の性質を鑑みながら利回りの高い運用を目指すべきだと考えます。とはいえ、課税繰り延べによって全く差が出ないわけではなく、多くの方が大袈裟に言うほどには出ないということです。表のとおり、5%で30年の場合は3.66倍と3.24倍の差が付きます。1年当たり約1%は差が付くわけです。この1%をとるか、もっとリターンの出せる投資方法を研究するかということになるでしょう。
なお、今回は最終的な課税を前提にしています。税金がかからなければ、利回りが低くても期間が短くても当然大きな差になりますので、iDecoやNISAは大いに利用しましょう。
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参考になります。
が思っていたよりは差がつかないのですね。
とても参考になりました。
Re: 参考になります。
これは意外と想像と違うんですよね。非課税なら明らかに差が付くんですが、年1桁%で現行の税率くらいなら結果はこうなるのです。もちろん、ハイパフォーマンス×超長期になればどんどん差は開いていきますし、当然ですが税率が上がるとやはり差は開きます。意外と「当然こうなるに違いない」という思い込みの一つかもしれませんね。
No title
自分は年末になると損切クロスを行うのですが
税金が戻ってくるからとは思いつつ、いつか売却するときにかかる税金は
増えると思うのでどれくらいの違いがあるのかがずっと気になっていました
いつか機会があれば記事にしてもらえればと思います
一応自分なりに考えた結果は損切クロスを行う年は、去年のように大きく下げてる時なので
戻ってきた税金で割安になっているものを買っておけばいいのかなと思っています
逆に戻ってきた税金をそのまま現金として保有するならあまり損切クロスはしなくてもいいのかなと思ってしまうのですが、間違ってますかね?
Re: No title
> 自分は年末になると損切クロスを行うのですが
> 税金が戻ってくるからとは思いつつ、いつか売却するときにかかる税金は
> 増えると思うのでどれくらいの違いがあるのかがずっと気になっていました
実際その通りで、10万円で取得した株を9万円で一旦損切りクロスすると、他の株の売買で利益が出ていたり配当を受け取っている場合は税金2000円戻りますが、取得単価が9万円になりますので、その後に12万円で売れば6000円の税金がかかり、差し引き4000円の税金がかかります。
一方、10万円で取得した株をそのまま12万円で売れば売買益は2万円、税金は4000円となりますので、一見どちらも同じように見えます。
> 一応自分なりに考えた結果は損切クロスを行う年は、去年のように大きく下げてる時なので
> 戻ってきた税金で割安になっているものを買っておけばいいのかなと思っています
ここですね。かりに、10万円で買った株を保有し12万円で売却するまでの期間に、損切りクロスをすれば手元に2000円あるのです。仮に前述の株が10万円→12万円となるのに5年かかった場合、手元の2000円を年率15%で運用することができれば5年間で約2倍になります。
> 逆に戻ってきた税金をそのまま現金として保有するならあまり損切クロスはしなくてもいいのかなと思ってしまうのですが、間違ってますかね?
キャッシュポジションができるので無駄ではないと思います。当初は現金として保有していても、期間が経てば投資したくなるかもしれませんので。
No title
いつかは損切クロスせずに済むような銘柄選択の力を身に付けたいものです